「11年目の第一歩って感じだな」(オカモトレイジ)。
「本当はお客さん前にやりたかったですけどね。この5人のやつを何の予告もせずに」(ハマ・オカモト)
「でも形に残るっていうのもいいことだよね。初めて新曲をやるっていうのもね」(オカモトショウ)
ハマ・オカモトのベースラインにBRIAN SHINSEKAIとオカモトコウキのコーラスが乗る。この日が初パフォーマンスとなったこの「Welcome My Friend」は、8月26日にリリースされたばかりの6曲入り新作EPの表題曲で、テレビアニメ「富豪刑事 Balance:UNLIMITED」のエンディングテーマとして、すでに海外で人気を博しているナンバーだ。
言うまでも無くOKAMOTO’Sのプレイはスピーディーな演奏もたまらないが、このミディアムテンポのグルーヴに、言わば"ベテランの風格"にも似た頼もしさを見たのは、おそらく筆者だけではないはずだ。さらにアメリカンロックを想起させるアレンジやキーボードの効果的な作用から、彼らが切り拓いた新境地のサウンドである。
〈Welcome My Friend , Let's get to work〉というリリックからは新たなOKAMOTO’Sと新たなリスナーとの出会いのための言葉だろう。そして〈君越しに見る世界が/ほんの少し/ほんの少し/輝きを見せるんだ〉、〈Show must go on, I just need you, more than ever〉といったリリックからは、予想外の世相のなかで11年目を迎えたメンバー同士の絆と、オーディエンスの存在へのメッセージを強く感じさせる。"誓い"の一曲のようだ。
「初披露のものがずっと残るっていいね」。演奏後、オカモトレイジの言葉に一同が頷く。
2曲目は「NO MORE MUSIC」。この2017年リリースにされた7枚目のアルバムの表題曲は、オカモトショウ曰く、「音楽が何よりも大事な四人が奏でる「音楽って必要ですか?」という曲。自分たちの核のひとつにある曲」である。未曾有の時代、
"不要不急"という言葉で全てのカルチャーとエンタテインメントの存在意義が問われた昨今だからこそ、やはりこの曲もまた新たな意味をもってオーディエンスの心に響いたはずだ。
ALIはメジャーデビューして1年目。岡崎体育は「30歳までの悲願」に掲げていたさいたまスーパーアリーナ公演を昨年に終え、OKAMOTO’Sもデビュー10周年を記念した日本武道館公演を盛況のうちに収め、それぞれ新章を目前にしてのコロナ禍となった。
終演後の彼らに話を聞くと、思い思いの言葉が返ってきた。
「「良いライブを撮ろう」というスタッフの"圧"がもの凄かった(笑)。「Wild side」を送ることで、「ALIは元気だよ。これからもよろしく」とみんなに伝えたかった。そして「Better Days」には、より良い未来への願いを込めました」(LEO(ALI))
「たまアリを終えた後、制作や楽曲提供のみに活動をシフトしようかと考えていた時期もあった。でも、ライブができないと、ライブが恋しくなった。プロのミュージシャンとしての、エンターテイナーとしての岡崎体育のプライドを再確認したフェスとなりました」(岡崎体育)
「「白壁で全てをさらけ出してください」というライブだった。緊張したけど、楽しかった。どんな状況でも自分たちの芯は揺らがない。いま、この2曲がプレイできてよかった」(オカモトショウ(OKAMOTO’S))
「今回のようなエキサイティングな機会は、これからさらに求められるんじゃないかと思う」(オカモトコウキ(OKAMOTO’S))
「世界中が同じように不安な時こそ、ポテンシャルや真価が問われる。だから気持ちをしっかりしておかないと。僕らが元気を見せられることがまず大事なのかなと」(ハマ・オカモト(OKAMOTO’S))
「コロナがあろうかなかろうが健康第一。俺らの音楽が何かの力になればうれしい」(オカモトレイジ(OKAMOTO’S))
9月5日当日の配信時は、定刻の20時ジャストになるとスタートした2分前のカウントダウンからコメント欄が早くも活気づいた。
本編中のリアルタイム視聴者数はMAX時で14000人超えを記録。コメントは英語を主に多国語でも多数寄せられていた。海外からのアクセスも多い「THE FIRST TAKE」の特性が、この『THE FIRST TAKE FES vol.1』でも同じように反映されていた。
最後に、全ての収録は全キャスト・スタッフへの検温実施、マスクやフェスガードの装着、ソーシャルディスタンスやステージ上でのアクリル板の設置など、徹底した感染予防対策のもとで行われたことをレポートしておきたい。さらに、全てのパフォーマンスが、たしかに撮り直し無し・一発勝負の記録であることも、あらためて記しておく。
トータルタイム、37分。凝縮された時間のなかでプレミアムな緊張感を届けた『THE FIRST TAKE FES vol.1』。早くも次回の開催に期待が募る。
(TEXT:MASAKI UCHIDA)